2021年7月14日水曜日


マダニにご注意!
日経記事より抜粋
新型コロナより高い死亡率のウイルス感染症
高齢者で重症化 有効な治療薬はなし

                       高原 喬二

 日経新聞の7月5日号、にこんな記事がありました。山仕事に携わる者にとっては見過ごせないと思い、ご披露します。
 また、同紙では7月18日号でも再度マダニ感染症について報じています。新情報を抜粋し、後に続けてご披露しましょう。

マダニ媒介の感染症拡大
アウトドアで注意を
夏休み、専門家が警鐘(7/5)

 マダニにかまれることで感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の関東地方で初めての感染例が千葉県で確認された。致死率は10~30%と高く、死亡例の報告もある。感染地域は西日本を中心に徐々に拡大しており、専門家は夏休み中にアウトドアで肌を露出しないよう、注意を呼びかけている。

 マダニは山や草むらに生息している。SFTSはマダニが持つウイルスが原因で、2011年に中国で発見された。潜伏期間は6~14日で、初期には発熱や倦怠(けんたい)感などの風邪の症状が現れる。重症化すると意識障害や紫斑などの出血症状が起こる。高齢者で重症化しやすい。有効な治療薬はなく、治療は対症療法が中心となる。死に至ることもある。

(略)

 国内では、13年1月に海外渡航歴のない人が感染したことが初めて報告された。20年12月30日時点で573人の患者が国内で報告され、75人が亡くなった。

 SFTSに詳しい宮崎大学の岡林環樹教授は「マダニの生息域は広く、アウトレジャーで発症するリスクもある」と注意を呼び掛ける。

 マダニから身を守るには、肌を露出しないことが重要だ。キャンプなど屋外で遊ぶときは、長袖と長ズボンの着用が有効だ。虫よけ剤も効果が。

(日本経済新聞 21年7月6日より抜粋引用)


ダニで高熱、主犯はウイルス
診断遅れで重症化しやすく(7/18)

 マダニはいったん体についた後、首や耳、わきの下、足の付け根や手首、膝の裏など軟らかい場所に移動して血をすう。このときウイルスがヒトの体内に入り感染する。マダニは蚊と異なり、数日から10日以上にわたって血を吸う。吸血中のマダニを見つけたらあわてずにそのままにして皮膚科を受診した方がよい。無理に引きちぎると一部が残って化膿(かのう)したり、マダニの体液からウイルスが体内に入りやすくなるという。

 感染した場合の治療の中心は対症療法で、解熱剤などを使う。有効なワクチンや抗ウイルス剤はまだないが、愛媛大学や宮崎県立宮崎病院などが参加し、富士フイルム富山化学の「アビガン(一般名ファビピラビル)」を用いた医師主導治験が16年から18年に実施された。SFTSと診断された平均年来71歳の患者23名に投与し、4人が死亡し19人が回復した。後遺症はみられなかった。症例数が限られており効果を証明するのは難しいが、「これまでの対症療法のみと比べると致命率は下がった」(愛媛県立医療技術大学・安川学長)。同社は承認申請に向け準備中だ。

 病原体であるSFTSウイルスはマダニが媒介し、イノシシやシカ、アライグマなどの野生動物の間で行き来している。国立感染症研究所などの調査では、千葉県や静岡県などの東日本でも野生動物がSFTSに感染した証拠が見つかった。同研究所の前田健部長は「リアルタイムで国内に広がっているのを感じている」と話す。和歌山県でアライグマの抗体を調べたところ、07年には陽性例は見つからなかったが、14年に急増。今では半数が抗体を持つという。

 SFTSウイルスを運ぶのは主に二タトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニなどのマダニの仲間だ。家にいるダニとは種類が違う。ただ、これらのマダニ全てがウイルスをもっているわけではなく、流行地でも0.1%以下と推定できるという。

 対策でもっとも有効なのは、媒介するダニに接触しないことだ。畑や山林、民家の裏、草むらなどに生息し、人や動物が近づいてくると飛びついて吸血する。かまれても気づかないことが多いので要注意だ。

(略)

 DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫よけ剤には、服の上から使うタイプも市販されており、補助的な効果があるとされている。屋外で活動した後はシャワーか入浴で、マダニにかまれていないか確認しよう。(藤井寛子)


脳炎やツツガムシ病も

 ダニが関わる感染症はほかにもある。ダニ媒介性脳炎は、16年に北海道で国内初の死亡例が出た。ウイルスが原因で、マダニにかまれて感染する。潜伏期間は7~14日で、発熱や筋肉痛、頭痛などの症状が出る。重症化すると昏睡(こんすい)やマヒなどの神経症状が出て、死亡する場合もある。日本では承認されたワクチンがなく、有効な抗ウイルス薬もない。

 ツツガムシ病は北海道以南で患者が報告されており、年に400~500例ほど患者が出ている。ダニが運ぶ感染症で最も年間の報告数が多い。ツツガムシの幼虫が病原体の細菌を運ぶ。

 日本紅斑熱は西日本を中心に患者が出ており、病原体の細菌をマダニが運ぶ。ツツガムシ病も日本紅斑熱も症状が似ており、発熱や発疹、ダニによる刺し跡が見られる。

 ライム病もマダニが媒介する感染症で、病原体は細菌だ。北海道で報告例が多い。これらの細菌による感染症は抗菌剤で治療できる。

(日本経済新聞 21年7月18日より抜粋引用)

2021年6月30日水曜日

特集:清水さんの救急箱
  コンコンジイ(前田)         

 わが「和泉葛城山ブナ愛樹クラブ」は多士済々ですが、中でも異彩を放っているのがこの人、清水さんです。

 清水さんは元陸上自衛隊第37普通科連隊の名物教官でした。
 その経験をわがクラブの山仕事にも活かし、活動に及んでは常に救急事態に備えています。その象徴とも言うべきものが、この「清水さんの救急箱」でしょう。







 こんなものがぎっしり詰め込まれています。
 中には、ふつうの救急箱にはないものがあります。

 例えばこれ!
 これはいったい何だと思いますか? 
 分かった方はかなりその道に詳しい方です。

 
 実はこれ、アンモニアをしみこませた気付け具、意識を失ったとき鼻に嗅がせて回復させるすぐれものなのです。
 実際にメンバーが熱中症にかかったとき救ったこともあります。

 次の器具も普通の救急箱には見かけませんね。無呼吸になった人の口に黄色の突起を入れ、息を吹き込んで人工呼吸をするものです。 




 これはお定まりのピンセットやハサミ。
 真ん中にある注射針のようなものはトゲが刺さったとき抜き出す器具です。


 その他、小さな箱に、気付け薬から消毒綿まで必要に備えたさまざまな用具・用品が詰まっています。
 ちなみに、緑のボトルは切り傷・刺し傷・スリ傷等の消毒用、 シグナルは胃薬、袋の黒い丸薬は胸やけ・胸つかえ・嘔吐・吐き気用、 キンカン(アンモニヤ成分)は主に気付け用で、虫刺されにも有効。

 このほか、箱には入りきらない用具もいろいろと準備があって、ぎっしり車のトランクに積まれています。

 次の写真の上に見えるのは、骨折などのケガを負ったときナプキンがわりに支えるロープ。するするとほどけます。
 下は止血用具として使える自転車のチューブ。簡便です。輪ゴムだって役立ちます。


 これは保温シート。小さく折りたたんだものを広げれば、低体温症になった体を包んで温めてくれます。

 次は水難救助の用具。ペットボトルに錘となる砂をいれてロープをつないだもので、溺れた人に投げかけて救助します。
 これに範を得て、ため池の近くに住んでいるあるメンバーは、いざというときに備えて常備しているとか…。

 水難救助にはこんなものも…。

 さらには、もっと大掛かりな道具も常にトランクに積み込まれています。
 写真は遭難者が下に滑落などした場合、ロープをどこかに固定して遭難者のもとへスルスルと下りていくための手作りの装備。

 一方これは、遭難者を引き上げるための手作りの装備。素材は消防ホースを廃物利用。丈夫です。(清水さん、演技もなかなかのもの!)


 いずれの装備にも創意工夫が満ちています。もうひとつ、山仕事の達人にしてはじめて着想し得たこんなものをご紹介しておきましょう。使いつぶしたチェンソーの刃を再利用した手動のチェンソーです。

 おや、これは?! どうやら救急用具ではありませんね。
 山中にたたずむお地蔵さんに清水さんがお裁縫して着せかけた前掛けです。

 人にも、お地蔵さんにも、心優しい清水さんです。

2020年10月27日火曜日


「ドングリのホームステイプロジェクト」の話
  ―子どもたちの心にブナを植える―
                  高原喬二
(クラブメンバー)


 前回の例会でトラスト協会から学校で苗まで育てる話がありましたが、私が参加している「北摂の炭焼き」でも「ドングリのホームスティ」なる行事を始めました。子どもたちにドングリを育ててもらい山に植樹させるという企画です。 うまく行くかどうかは分かりませんが、子どもたちに山に親しませることも目指しています。 
 わがクラブでも「ブナの里親」のプランがありますが、未来を考えるなら、その担い手である子どもたちにどう働きかけるのが大事であるのは言うまでもありません。例えば以前見学に来た「清流の家」などお誘いするなども一案かと思います。
 子どもたちの心にブナを植えたいものです。

 参考までに、「ドングリのホームステイプロジェクト案内」の要項を引用しておきます。
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 皆様 ドングリのホームステイプロジェクト活動が下記の通り行われます。 この活動は.菊炭と里山を未来につなぐ植樹会に向けての活動です。 非常に有意義な活動ですので.都合の付く方は参加下さい。 
  1. 活動日時  10月24日(土) 10:00~14:00           
    予備日 10/25(日) 
  2. 活動場所  能勢町 中田尻の森周辺 
  3. 集合場所  能勢里山創造館 
  4. 集合時間  9:30 
  5. 活動内容  
    ① ドングリ拾い  
    ② ポットにドングリ播種…自宅に持ち帰って(ホームステイ)2年間育てる。令和4年に植樹。  
    ③ クヌギの苗床の除草   昼食のおにぎり持参下さい。豚汁などを用意しています。 
  6. 雨天時の対応  小雨決行。雨天中止。


2020年10月23日金曜日

ブナが数年に一度、 ドカンと大量の実を落とすワケ

学者の話を再録します  朝井厚子(クラブメンバー)

 今年、和泉葛城山のブナの実が豊作だと随所で話題になっています。でも、どうして数年に一度なんだろう?

 これについては、このブログでも7/23の活動報告で「ブナが数年に一度、ドカンと大量の実を落とすワケ」という学者の説明を載せた「林業ニュース」のサイトを紹介しています。ただ、投稿の末尾にちょろっと載せているだけでしたので注目度はいまひとつだったようです。
  そこで、同説を再録するのもまた一興かと、以下に引用します。ズバリの回答がそこにあって、楽しい!

 なお、著者の松原始さんは動物行動学者だそうで、植物学は必ずしもご専門ではないのかもしれませんし、引用文にしても全編動物の行動についての中の一挿話に過ぎません。もし、異見・異論があればぜひともコメントかご寄稿いただくと、深まるでしょう。

 以下は、『カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?』 松原 始(
1920) 山と渓谷社刊(199~200頁)からの引用です。太字表示は原書通り。
  (朝井)


 この、「大量に産めば誰か残るよ」作戦は生物には普遍的なものである。例えば、毎年毎年、大量の実を落とすブナ。だからって雑木林がブナの若木で埋め尽くされているのは見たことがないはずだ。というのも、ブナが発芽するには、いくつものハードルがあるからである。 

 まず、地面に落ちたブナの実は片っ端から動物に食われる。だいたいはネズミ、あとはイノシシなどだ。いや、落ちる前からゾウムシが産卵していて、殻の中で食べられていることも少なくない。あるいは腐ってしまう。その結果、多くの場合はその全てが食われるか腐るかしてしまい、発芽することさえできない。 

 だが、数年に一度、大豊作がある。こういう時はネズミも食べ尽くすことができず、実が生き残って発芽するチャンスがある。というより、数年に一度ドカンと豊作にすることで、チャンスを作り出している、と言ったほうがいい。

  平常の結実数を低く抑えておくと、ネズミはそのレベルで食っていける数までしか増えられない。そうやってネズミの個体数を抑えておき、たまにネズミの食べる量を大きく上回る数の実を落とせば、間欠的にだが、ブナは発芽のチャンスを得られるのだ。こういう周期的な大豊作を「マスティング」といい、様々な植物に見られる。
 
 もっともブナの場合、発芽したとしても林床はササで覆われて光が届かない。光を浴びて大きく成長するチャンスは、ササが一斉開花して一斉枯死し、林床が明るくなる時だけだ。だが、光が不足したままヒョロヒョロの苗木として生き延びられるのはせいぜい数年。一方、ササが一斉枯死するチャンスは、数十年に一度しかない。

 つまり、マスティングの年に実り、かつそれから数年以内にササが枯れてくれた場合だけ、その実はブナの大樹に育つ可能性がある。そんな気長な、と思うが、ブナの寿命は400年くらいあるので、その間に何度か「子孫が残る年」があればいいのだろう。
(略)

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【コメント】
 ブナの実の場合はゾウムシではなく、ブナヒメシンクイという蛾の幼虫が食害の主要因であることが調べられています。(土井)



マダニにご注意! 日経記事より抜粋 新型コロナより高い死亡率のウイルス感染症 高齢者で重症化 有効な治療薬はなし                         高原 喬二  日経新聞の7月5日号、にこんな記事がありました。山仕事に携わる者にとっては見過ごせないと思い、ご披露しま...